ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会まで1カ月を切った。9月20日の日本対ロシア戦で幕を開け、11月2日の決勝戦まで、全国12都市(札幌、釜石、熊谷、東京、横浜、静岡、豊田、東大阪、神戸、福岡、熊本、大分)で計48試合が行われる。
20カ国が参加する今大会では、世界中から観戦者が集まることが予想され、インバウンド需要が高まることが予想される。W杯組織委員会はW杯を目的にした訪日客を40万人と見込んでいたが、最近は50万人を超えそうとの見方も出ている。
W杯組織委員会は、大会開催における経済波及効果を4372億円と予測。スタジアムでの観戦者は最大で180万人に達する可能性もある。また、大会をきっかけとした訪日客の消費支出は1057億円に上るとみている。
恩恵は宿泊業界にも及ぶのだろうか。西日本新聞によると、大分県のW杯期間中の宿泊予約状況は、6月1日時点で県内の客室の半分程度が埋まり、試合会場がある大分市や別府市では60~80%に達している。
別府市の老舗ホテルでは、試合当日は既に80~90%が埋まり、外国人客の割合は3割を超えているという。また、同市内の大型旅館では準々決勝の2日間は満室状態だ。
ただ、W杯期間中は秋の行楽シーズンで、素泊まりが多く、人数も少ない外国人を受け入れていては客室当たりの売り上げは伸びないという意見もある。「日本人の旅行を受け入れたほうが売り上げは上がるし、言葉などにも気を使わなくてすむ」と言い切る経営者もいる。
さらに、タトゥーの問題もある。タトゥーに対する考えが日本人と外国人では異なり、海外ではタトゥーが伝統文化に根ざす場合もあり、かつファッション感覚で入れる人も少なくない。
タトゥーの入浴客にどう対応すべきか。観光協会関係者は「タトゥーに嫌悪感を持つ客もおり、施設に入浴を認めるよう強制することは難しい」と話す。
一方で、「貸し切り風呂を勧めたり、シールなどで小さなタトゥーは隠すようお願いする」という旅館もある。大分県のように、タトゥーOKの施設をホームページ上で紹介する自治体もある。
ラグビー観戦が目的といえ、訪日を機に日本ファンになってもらい、「日本に来てよかった。また来よう」と思わせたい。試合会場となる地域はその魅力を伝える好機として捉え、自治体などはしっかりと対応してもらいたい。
いずれにしろ、多くの外国人が日本にやって来る。「東京2020」を見据え、W杯を成功させたいものだ。
【内井高弘】
日本で初開催のラグビーW杯は、観光に追い風となりそうだ(試合会場となる埼玉・熊谷ラグビー場)